2004年6月8日には下記の時刻に「金星日面経過」が起こりました。後半の接触は日没後となり日本からは観測出来ない状況でした。我々は日達先生の御協力の下で九段高校天文台での観測を計画しました。
2004 June 8 東京 h m 日本時 太陽高度 北極方向角
第一接触 14:11.2(JST) 55゚ 117゚
第二接触 14:30.4(JST) 51゚ 120゚
金星 没 18:53.9(JST)
第四接触 20:26 (JST)
視直径
太陽 1890.7"= 31.5'
金星 58.2"= 0.97'
観測期材
15cm EDアポクロマート屈折望遠鏡(F15) -- 投影像スケッチ
10cm EDアポクロマート屈折望遠鏡(F12) -- ビデオ撮影
8cm アクロマート屈折望遠鏡 (F11) -- 写真撮影
当日は曇で、ときどき雲間から太陽が顔を出す程度の残念な天候で、期待した第一接触や第二接触付近の観測は出来ませんでしたが、15h(JST)過ぎから雲間に現れた太陽を捉えることが出来ました。以下にビデオ画像からの静止画像などをご紹介します。
OBからは、田中光一氏(高13回)浅井秀幸氏(高19回)の参加がありました。折から中間テスト中で活動が出来ない現役諸君でしたが、時間になると、どこからともなく現れてにぎやかな観測になりました。
日面経過は内惑星が内合時に太陽面を通過する現象で、以下に述べるように時間的には皆既日食よりも遙かに珍しい現象です。もう一つの内惑星が太陽面を通過する「水星日面経過」は、金星より頻繁に起きて、昨年も現象が起こっています(2003 May 07)。金星は内合時の視直径が大きく大型の黒点ほどになり、日食サングラスなどで減光すれば肉眼でも簡単に捉えられました。
近時の金星の日面経過は、以下の日付で起きていて、今回はほぼ130年ぶりの出来事でした。8年ごとのペアで起きることが多く、2012年6月6日の次回には、東京では午前中に始まって昼過ぎに終わる全経過が観測出来る良い条件となり、期待しています。
DT series 1639 Dec 04 18.4 B -- 始めて観測された金星日面経過 1701 Jun 06 05.3 E 1769 Jun 03 22.4 F 1874 Dec 09 04.1 C 1882 Dec 06 17.1 B 2004 Jun 08 08.3 E 2012 Jun 06 01.5 F 2117 Dec 11 02.9 C 2125 Dec 08 16.1 B
DTは金星が太陽の中心にもっとも近づく時刻の力学時で、ほぼ JST=DT+9hです。同じseriesは243年周期でおとずれ、数千年続きます。
1874年には日本での観測条件が良く、フランス(長崎・神戸)、アメリカ(長崎)、メキシコ(横浜)が観測隊を派遣しました。当時は此の現象の接触時刻の観測により太陽との距離(1天文単位)が求められることもあり、各国が世界各地に観測隊を派遣しました。日本では明治7年のことであり、本格的な観測は行われませんでしたが、各観測隊に協力して、観測法を学んだ日本人は数多くいます。